「除脂肪体重(LBM)」を正しく理解し、健康的な体づくりをしよう

体重から脂肪を除いた「除脂肪体重(LBM)」の正しい知識は、健康的な体づくりに不可欠です。筋肉だけでなく、基礎代謝を支える臓器の重要性にも焦点を当てて解説します。

ダイエットや筋トレで重視される除脂肪体重(LBM)。その中身は筋肉だけではありません。基礎代謝を支える臓器の役割を含め、LBMの真実を専門的な視点からわかりやすくお伝えします。

除脂肪体重(LBM)とは?その定義と構成要素

体重管理において、体脂肪量とともに注目すべき除脂肪体重(LBM)。まずは、LBMが具体的に何を指し、どのような要素で構成されているのかを、専門的な視点から正確に理解しましょう。

LBMの基本的な定義と計算式

除脂肪体重(Lean Body Mass: LBM)とは、その名の通り、「体重全体から脂肪の重さを除いた体重」を指します。計算式で表すと、「体重 − 体脂肪量 = 除脂肪体重」となります。

減量や体づくりにおいては、単に体重を落とすことではなく、このLBMを維持、あるいは増量させながら体脂肪を減少させることが、健康的で理想的な体組成へとつながるとされています。

LBMを構成する要素の割合

では、除脂肪体重の中身は具体的に何で構成されているのでしょうか。

多くの方が「筋肉」を思い浮かべるかと思いますが、LBMは骨格筋(筋肉)のほか、内臓(肝臓、脳、心臓、腎臓など)、そして水分血液といった、脂肪以外のすべての組織で構成されています。

一般的に、LBMに占める骨格筋の割合は約50%程度とされています。つまり、LBMの半分は筋肉以外の組織が占めているということです。特に医療や栄養学の分野では、LBMの構成要素の変動が、健康状態や加齢に伴う変化を評価する上で非常に重要視されています。

LBMを構成する要素の割合は、一般的に以下のようになっています。

骨格筋:約50%を占め、運動によって増減しやすい要素です。
内臓(肝臓、脳、心臓、腎臓など):約20%を占め、基礎代謝において高いエネルギー消費を担います。
:約15%を占め、骨密度はLBMの評価に影響を与える重要な要素です。
その他(水分、血液、皮膚など):約15%を占め、特に体内の水分量がLBMに大きく影響します。

基礎代謝の主役は筋肉ではない?臓器が担う重要な役割

「筋トレで基礎代謝を上げる」というフレーズをよく耳にしますが、基礎代謝における筋肉の役割は、しばしば過大評価されがちです。基礎代謝の真の主役は、生命維持に不可欠な臓器です。

基礎代謝における各臓器のエネルギー消費比率

私たちが1日に消費するエネルギーのうち、約60%を占めるのが、生命を維持するために最低限必要なエネルギーである基礎代謝です。

この基礎代謝を支えているのは、安静時にも活発に働いている重要臓器です。

安静時にも活発に働いている重要臓器の基礎代謝に占める割合(目安)は、以下の通りです。

肝臓:約27%
脳:約19%
骨格筋:約18%
腎臓:約10%
心臓
:約7%
その他:約19%

出典:厚生労働省 e-ヘルスネットなどのデータに基づき作成

このデータからわかるように、肝臓(約27%)や(約19%)といった臓器が、単独で骨格筋(約18%)よりも高いエネルギー消費を担っています。肝臓、脳、心臓、腎臓といった重要臓器を合わせると、基礎代謝の約6割以上を占めているのです。

この事実から、骨格筋のわずかな増減が基礎代謝全体に与える影響は、一般的に考えられているよりも小さいことが理解できます。

筋肉の役割を冷静に捉える

もちろん、筋肉は基礎代謝に貢献する重要な要素であり、運動によって増減させやすい唯一の要素です。しかし、「筋肉を増やせば劇的に基礎代謝が上がる」という認識は、臓器の役割を無視した誇大評価である可能性があります。

基礎代謝は、LBMを構成するすべての要素、特に臓器の健康状態に大きく依存しているのです。

LBMを意識した健康的な体づくりの考え方

筋肉の役割を冷静に捉えた上で、除脂肪体重(LBM)を健康的に維持・向上させるための考え方をご紹介します。LBMの維持は、単なる体型維持ではなく、健康寿命の延伸に直結します。

筋肉を鍛える真の目的

骨格筋の増減が基礎代謝に与える影響が小さいからといって、筋力トレーニングが不要なわけでは決してありません。

筋肉を鍛える真の目的は、以下の点にあります。

活動代謝の向上 筋力や体力が向上することで、日常生活や運動における活動量が増え、結果としてエネルギーの総消費量が増加します。基礎代謝(じっとしている時のエネルギー)よりも、動くことによる活動代謝の向上が、健康的な減量や体づくりにはるかに大きな影響を与えます。

生活の質の維持(QOL) 加齢に伴いLBMは減少し、特に筋肉量と骨量の低下は、フレイル(虚弱)やサルコペニア(加齢性筋肉減弱症)のリスクを高めます [9] [10]。筋力トレーニングは、これらのリスクを軽減し、健康寿命を延ばすために必須の要素です。

臓器の活性化: 活発な運動は、血流を改善し、全身の細胞や臓器に酸素と栄養を効率よく届けます。結果として、基礎代謝の主役である臓器の働きも活性化されると考えられます。

LBM全体を健康に保つことの重要性

除脂肪体重(LBM)は、筋肉だけでなく、臓器や骨といった生命の根幹を支える要素の集合体です。

健康的な体づくりとは、LBMを構成する一つひとつが健康であることを目指すことです。

筋肉 適切な運動で筋力と体力を維持・向上させる。
臓器 栄養バランスの取れた食事と適度な運動で、臓器の健康を保つ。
: カルシウムやビタミンDの摂取、適度な負荷をかける運動で骨密度を維持する。

「筋トレで基礎代謝を上げて!」という言葉の裏には、「筋トレで体力を向上させ、活発な生活を送ることで、結果的に基礎代謝も上がり、総消費エネルギーを増やしましょう」という、より深いメッセージが込められていると理解することが大切です。

健康意識の高いミドル世代の皆様、そして医療従事者の皆様におかれましては、除脂肪体重における筋肉の役割を冷静に認識し、LBM全体を健康に保つという視点から、日々の健康管理や指導に役立てていただければ幸いです。

【まとめ】除脂肪体重の真実を知り、健康寿命を延ばす体づくりへ

除脂肪体重(LBM)の正しい理解は、健康的な体づくりへの第一歩です。筋肉だけでなく、臓器の健康こそが基礎代謝の鍵を握ります。LBM全体を意識した、より本質的な健康法を実践しましょう。

これまでの内容を振り返り、除脂肪体重(LBM)に関する重要なポイントを再確認しましょう。

除脂肪体重(LBM)は筋肉だけではない: 骨格筋のほか、臓器、骨、水分など、脂肪以外のすべての組織で構成されています。

基礎代謝の主役は臓器: 基礎代謝のエネルギー消費の多くは、肝臓や脳などの重要臓器が担っており、筋肉の関与は一部です。

筋トレの真の目的: 基礎代謝の向上よりも、活動代謝の向上、QOLの維持、そしてLBM全体を健康に保つことにあります。

除脂肪体重の真実を知り、筋肉の役割を過大評価せず、LBM全体を健康に保つという視点を持つことが、健康寿命を延ばすための本質的な体づくりにつながります。

筆者プロフィール

大塚聡 / パーソナルトレーナー(株式会社サミープロジェクト)

株式会社 サミープロジェクト代表取締役
サミーコンディショニングスクール代表
一般社団法人日本生活体力推進協会代表理事

1961 年5 月生まれ
早稲田大学教育学部体育学専修卒
早稲田大学大学院人間科学研究科修了(体力科学専攻)
フィットネスクラブ指導責任者、経営責任者を経て独立
株式会社サミープロジェクトを設立し現在に至る

資格

人間科学(健康科学)修士
教育学士
NSCA-CPT(パーソナルトレーナー)
CSCS(ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
日本体力医学会健康科学アドバイザー
厚生労働省ヘルスケアトレーナー
中学・高校保健体育教員ら
国際救命救急協会救急心肺蘇生法取得者

主な企業フィットネス実績

・ベネッセコーポレーション高齢者身体づくり教室監修
・日本商工会議所主催生活習慣病予防改善セミナー全国各地にて講演
・モーリスコーポレーション健康事業顧問
・ライオンズクラブ健康セミナー
・公立高校における親子健康セミナー

など、企業の健康関連部門においても多数活動