高血圧の運動療法は“楽しく継続”が大事!押さえておきたいポイントを解説!

並んでウォーキングをする二人

高血圧を放置しておくと血管が傷ついて硬くなることで、動脈硬化を進行させます。そして脳卒中(脳梗塞や脳出血)や心筋梗塞、心不全、腎臓病など重大な病気を引き起こすリスクを高めてしまいます。

そうならないために、まずは「運動療法」を取り入れることで血圧を下げて健康な体にするためのポイントをわかりやすく解説します。

高血圧の基礎知識と「高血圧症」の違い

血圧を測る女性

高血圧の運動療法について触れる前に、まずは高血圧を起こすメカニズムや「高血圧症」に関する基礎知識をお伝えします。

血圧とは?

血圧とは血管内の圧力のことをいいます。心臓はポンプのように収縮と拡張を繰り返して全身に血液を送り出しています。

心臓が収縮して、血液を押し出すと血圧は上がります。この時の血圧が「最大血圧」でいわゆる「上の血圧」です。反対に、心臓が拡張している時は血圧は下がります。この時の血圧が「最小血圧」でいわゆる「下の血圧」です。

例えば「上の血圧が120、下の血圧が80」だとしたら上120、下80と表現し「120/80」と記載されます。

“血圧が高い”とはどういう状態?

高血圧症の診断基準は細かく分類されていますが、ここではわかりやすく基本の数値のみを示します。安静時の上の血圧が「140mmHg 以上』又は、下の血圧『90mmHg 以上』が高血圧症とされます。

この数値は提唱する機関やその時代背景で変わることがありますが基本的な数値として把握してください。「上の血圧が140」「下の血圧が90」まずはこの基準を覚えておくと良いでしょう。どちらか一方でもこの数値以上であれば高血圧症です。

「高血圧症」との違いは?

高血圧症の診断基準は安静時に測定した数値によるものです。血圧は身体の状況により変動しやすく食事や排便、排尿、入浴、精神状態、運動により大きく変動します。

正常な人でも階段を駆け上ったりすると容易に上が200mmHg 近くになりますし、緊張すると150mmHg くらいにはすぐなります。「白衣高血圧」といって白衣を着た医師の前では緊張して血圧が上がるのに、家で測定すると正常値だという人もいます。

スポーツクラブなどで運動前に測定すると、やる気で気持ちが高ぶっている事もあるのか血圧が高めに出る場合がよくあります。血圧は様々な要因で上がります。

これは刺激により、その時点で「血圧が高い状態」であるということであって高血圧症ではありません。運動等の刺激により血圧が上がるのは正常な反応です。

「高血圧症」の診断基準は「安静時の血圧」です。気持ちを落ち着けて5分位安静にした後、測定するとよいでしょう。もちろん自分で判断せずに医師の診断を受けましょう。

高血圧に効果的な「有酸素運動」とそのポイント

ランニングシューズ

ここからは実際に高血圧に効果的な運動療法について解説していきます。運動と一口に言っても「何をどれくらいすればいいのか?」をわかりやすくお話しています。

血圧を下げたい時は”最大酸素摂取量”に注意

血圧を下げる運動とは「最大酸素摂取量の50%強度の有酸素運動」です。

心拍数から最大酸素摂取量%強度を推測する計算公式があります。

【求めたい強度の心拍数=(最高心拍数−安静時心拍数)×強度%+安静時心拍数】
※最高心拍数とは220−年齢です。

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<例>「30歳」で「安静時心拍数60」の人が「50%強度」の心拍数を求めたい場合。

最高心拍数=220−年齢=220−30=190
安静時心拍数=60
強度=50%=0.5

求めたい強度の心拍数=(190−60)×0.5+60=125

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この例では、「最大酸素摂取量の50%の運動は心拍数が125拍である」ということになります。

高血圧に効果的な「有酸素運動」のポイント

最大酸素摂取量の50%の有酸素運動はとても楽です。ですが、運動不足の人には最初はきつく感じるかもしれません。

例えば、50歳の人だと心拍数113くらいの有酸素運動ということになります。ちょうどいい運動方法は「ウォーキング」ということになります。血圧を下げる運動となると一番お手軽で現実的です。

ウォーキングは速度や腕ふり動作などで簡単に強度を調節できるので運動に慣れていない人にとてもおすすめです。ウォーキングは手首で脈をとり心拍数を把握しやすいのですが、できれば心拍数計(ハートレートモニター)でリアルタイムに確認するようにしましょう。腕時計型でおしゃれな心拍数計がありますので一つ持っているといいと思います。

スポーツクラブ等に行けば、ステップマシンやエアロバイク等も心拍数を見ながら強度を調節できるのでおすすめです。

負荷の強い運動は避ける

最大酸素摂取量50%を超える負荷の強い有酸素運動は、「血圧を下げる」ということに関してはお薦めできません。

最大酸素摂取量の40%〜50%までは血圧を上げる要素は体内にほとんど現われません。ところが、最大酸素摂取量の70%近くになると血圧を上げる要素が体内に急増します。

健康にいい強度としては最大酸素摂取量の40%〜70%の有酸素運動がお薦めですが「血圧を下げる」ということに焦点を置いた場合は違ってくるのです。ただし、症状の度合いなどにより最大酸素摂取量の70%以上の有酸素運動でも血圧を下げるのに有効な場合もあります。個人差や状況により運動プログラムはそれぞれ異なります。

その中でも多くの人を対象に、より安全に効率的に一番おすすめできる運動強度が「最大酸素摂取量の50%強度の有酸素運動」ということになります。

どれくらいの頻度で行うかは人それぞれ!

気になるのは、「どのくらいの頻度で行えば良いか?」ということになりますが、ここは個人差が大きいと言えます。

基本的に生活習慣病の予防として推奨されている頻度は「毎日30分以上行う」ことが理想とされています。

ただし、運動に慣れていない人だと「それでは疲れる」とか「時間がない」などライフスタイルや生活習慣によって状況は様々でしょう。ですので、一番始めは『一日おき、30分以上』をまずは目指してみましょう。

日頃運動を心掛けていて「これでは物足りない」という人は、強度を上げることはせずに運動時間を延長しましょう。

さらに運動の効果が薄れてしまいますので、「3日続けて4日休む」などではなくまんべんなく継続することがポイントです。

『一日おき、30分以上』はあくまで目標ですが、すぐに実行し習慣になる人もいれば週1日がやっとの人もいるでしょう。最初は週1日でも、それを2日にする事を目指してあきらめずに続けてみましょう。それが気づけば”習慣”になっていますよ。

血圧が高い人の「筋トレ」は要相談!

重い物を持ち上げたり、息を止めたり、力をいれていきむような「無酸素運動」(筋トレ)は血圧を上昇させます。ダンベル体操や、肩より上に腕を上げるような動作も血圧が上昇してしまいます。

筋力を向上させるような運動は健康づくりには必要なのですが、高血圧症の人においてはおすすめできません。これも個人差があり、全てがダメというわけではないので必ず医師や運動療法の専門家に相談するようにしましょう。

「高血圧症」は早めに対処を

運動療法の効果は必ずしも全員同じように出るわけではなく、血圧が高くなりすぎると効きにくい傾向があります。高血圧症の中でも軽症といわれる「上140〜160mmHg、下90〜95mmHg」のうちにしっかり行う事が望ましいといわれています。

高血圧の運動療法に関する注意事項

健康を届ける医師

ここまで高血圧に効果的な運動療法の押さえておきたいポイントを解説してきましたが、実際に取り組む際には気をつけておいて欲しいことがあります。無理をして悪化を招かないように、注意すべき点を解説していきます。

必ず運動前に血圧を測る

運動前に必ず血圧を測定しましょう。5分程安静にして測定し、3回測定してみて「上が180以上または、下が100以上」ならその日の運動はお休みしましょう。

例えば、「1回目の測定で上の血圧が185、2回目の測定で176、3回目で160」となっているような場合には十分注意しながら、無理のない範囲でゆるやかに実施してもよいでしょう。

 いつもは「140/85」くらいなのに今日は3回測定して「160/95」くらい、というように「明らかにいつもと違う」と感じる場合は、危険なこともあるので止めておきましょう。

降圧剤など処方箋を服用中は無理をしない

血圧の薬、なかでも「βブロッカー」などの降圧剤を服用している時は、血圧のみならず心拍数も低い値を示すので十分注意して行いましょう。 また、点眼剤(目薬)にも降圧作用を促進し、心拍数も抑制する効果のあるものもあるので医師の判断を必ず仰ぎながら十分注意して運動するようにしましょう医師の判断のもと運動を継続することで減薬やお薬を止められるなど、経過が良くなることもあるので安全に楽しく継続できるといいですね。

高齢者はその日の体調をよく観察する

高齢者の方は、表示されている心拍数の数値があてにならない場合があるので、ご自身の体調と十分相談し無理のない運動をより心がけましょう。心配な場合は医師の指示を仰ぐようにしましょう。

「高血圧症」の人は医師に相談のもと行う

高血圧症の人は運動不足であることが多いので、無理をせず徐々に目標運動量に近づけるようにしましょう。高血圧症でなくても、血圧に不安がある人は必ず医師の診断を受けてから運動をはじめるようにしてください。

【まとめ】「1日30分」の運動で血圧の上がりにくい健康な体になろう!

ランニング後にハイタッチする男女

今回は、高血圧の運動療法についてお話ししてきました。運動が生活習慣病の改善に役立つ事も事実ですが、運動中は身体の中で様々な変化が起こっています。

気分が悪くなったり、何か「いつもと違うな」と感じた時は絶対に無理をせず、運動を休んだり、中止をするという判断をしっかりするようにしましょう。心配な場合は医師の判断を仰ぐことも忘れないでくださいね。

運動は「無理せず、楽しく、継続すること」が毎日の健康づくりに欠かせません。わからないことがあれば会員サイトからお気軽にご質問ください!

筆者プロフィール(提案)

 

大塚聡 / パーソナルトレーナー(株式会社サミープロジェクト)

株式会社 サミープロジェクト代表取締役
サミーコンディショニングスクール代表
一般社団法人日本生活体力推進協会代表理事

1961 年5 月生まれ
早稲田大学教育学部体育学専修卒
早稲田大学大学院人間科学研究科修了(体力科学専攻)
フィットネスクラブ指導責任者、経営責任者を経て独立
株式会社サミープロジェクトを設立し現在に至る

資格

人間科学(健康科学)修士
教育学士
NSCA-CPT(パーソナルトレーナー)
CSCS(ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
日本体力医学会健康科学アドバイザー
厚生労働省ヘルスケアトレーナー
中学・高校保健体育教員ら
国際救命救急協会救急心肺蘇生法取得者

主な企業フィットネス実績

・ベネッセコーポレーション高齢者身体づくり教室監修
・日本商工会議所主催生活習慣病予防改善セミナー全国各地にて講演
・モーリスコーポレーション健康事業顧問
・ライオンズクラブ健康セミナー
・公立高校における親子健康セミナー
など、企業の健康関連部門においても多数活動