運動後の「筋肉痛」はメカニズムを理解して上手に付き合おう!
せっかく気持ちよく運動できたのに、翌日やってくる「筋肉痛」に悩まされることはありませんか?「筋肉痛ってどうして起こるの?」「久しぶりに動いたから?」「このまま筋トレを続けて大丈夫?」そんな疑問にお答えします。
今回は、運動後に起こる「筋肉痛」のメカニズムとその対処法について、わかりやすく解説していきます。日々の運動をより快適に続けるために、ぜひ最後までご覧ください!
筋肉痛のメカニズムについて
筋肉痛のメカニズムについては、実はまだ完全には解明されていません。現在は「こうではないか」といった複数の説があり、その中でもよく知られている内容を中心にご紹介していきます。
この記事では、筋肉痛を2つのタイプに大別して、それぞれの特徴を解説します。
運動中~運動直後に発生する筋肉痛
これには、「筋膜の断裂等筋肉の傷害」(明らかな怪我)の場合と、「疲労物質の蓄積による痛みの発生」とがあります。多くの場合は後者なので「疲労物質の蓄積による痛みの発生」について解説します。
長い階段を昇っていくと、しだいにふくらはぎや太ももが張ってきて、やがて焼けるような痛みが出てくる……といった感じです。
疲労物質というと「乳酸が溜まって……」と思われがちですがそれは違います。いまだに、乳酸を疲労物質と表現している場合がありますが、現状では乳酸は疲労物質ではないという見解が主流です。
確かに疲労度を測定するのに指標の一つとして測定しやすいということもあり乳酸濃度を調べる方法を用いますが、それは乳酸が疲労物質だからではありません。
痛みを発生させる疲労物質としては、カリウムイオン、無機リン酸、ヌクレオチド等が考えられています。水素イオンも間接的に関与しているとも言われています。まだまだ奥が深いようですね。
簡潔に言うと、運動中〜運動直後に発生する筋肉痛の多くは「筋の疲労蓄積に伴って痛みの原因となる物質が発生するパターン」ということです。
乳酸についての定番の参考文献
<乳酸(八田秀雄)ブックハウスHD>
http://www.bookhousehd.com/booksme006.html
<乳酸を活かしたスポーツトレーニング(八田秀雄)講談社サイエンティフィク>http://www.amazon.co.jp/gp/product/4061531166
運動後数時間から数日経ってから発生する筋肉痛
いわゆる一般的な筋肉痛で「遅発性筋肉痛」と言います。
運動した翌日や翌々日に、「身体が痛い」となるあの感じです。運動により筋肉に小さな傷ができそこに炎症反応が起こります。炎症が起こると筋肉が腫れ、熱をおびたりし、動かすと痛いということになります。
「遅発性筋肉痛」を起こしやすくする運動はエキセントリックな筋活動です。筋活動には「コンセットリック」と「エキセントリック」があります。
コンセットリックとエキセントリックを簡単に説明すると
・重いものを持ち上げる時、勢いよく持ち上げるのは「コンセットリック」
・持ち上げた物をゆっくり重さを感じながら降ろすのが「エキセントリック」
山登りでは登るのがコンセットリック、下りるのがエキセントリックです。ブレーキをかけるような動作での筋活動がエキセントリックです。このエキセントリックな筋活動が「遅発性筋肉痛」を起こしやすくするのです。
また、「遅発性筋肉痛」は一度起きるとその発生に起因する運動で二度目は起きない、起きても一度目よりは軽いと言われています。
例えば、バーベルでベンチプレス(胸と腕の筋トレ)のトレーニングをしました。翌日、筋肉痛が出ました。二日後少し痛みがひいたので、又同じトレーニングをしました。痛みが増すかと思っていたら、翌日筋肉痛は出ませんでした……ということです。
運動の翌日、筋肉痛が出ても同じような運動であればその状態で実施しても痛みが増すということはありません。
久々の運動後等は筋肉痛が出やすいですが、恐れることなく継続していった方が身体が慣れてきます。筋肉痛が出たからといって「自分にはこの運動はきつ過ぎるんだ・・・」とは思わないで積極的に継続していく事をおすすめします。
もちろん痛みの程度によりますので、くれぐれも無理はしないようにしてくださいね。
もしも筋肉痛が出てしまったら
筋肉痛は無理に我慢したり、間違った方法でケアすると、かえって回復を遅らせてしまうこともあります。ここでは、筋肉痛が出たときに心がけたい適切な対処法やセルフケアのポイントを解説します。
まずは冷やすこと
発生直後は冷やしましょう。とにかく、初期は炎症を抑える為に冷やします。氷で冷やすか、冷えピタや冷たいシップを貼っておけばよいでしょう。
痛みが少しひいてきたら、入浴後のストレッチなどで血行を促すようにしましょう。
こんな場合は医師に相談
筋肉痛は通常、数日で自然に回復しますが、中には注意が必要なケースもあります。たとえば、痛みが強くなる一方だったり、腫れ・熱感・赤みがひどい場合、または日常動作に支障をきたすような痛みが続く場合は別の疾患が隠れている可能性も。
特に外傷後の痛みや、長期間にわたる違和感があるときは早めに医療機関を受診しましょう。
筋肉痛を出さないためには
運動前の準備運動を十分にしましょう。そして、運動後のストレッチを念入りにします。
運動不足の人は草野球や山登り、テニス等のイベントがあるならば、何日か前から軽い運動でもいいので身体を慣らしておくのも大切です。エキセントリックな筋活動をなるべくしないように心がけましょう。
例えば、山登りでは下りる時に勢いよく下りずに杖をつくとか、そっとおりるといった工夫をすると良いです。
運動やトレーニング後、先手を打って氷や冷えピタやシップなどで冷やしておきましょう。(遅発性筋肉痛は運動直後はなんでもないので、痛みが無くても先手を打つと◎)
筋肉痛を和らげるには「栄養補給」が大事!
筋肉痛の回復には、休養やストレッチだけでなく「栄養補給」も欠かせません。運動後の体はダメージを修復しようとエネルギーを使っているため、適切な栄養をしっかり摂ることが、回復を早めるカギになります。
ここでは、筋肉痛をやわらげるために意識したい栄養素についてご紹介します。
筋肉痛の緩和に大切な栄養素
筋肉痛の緩和には、筋組織の修復を助けるタンパク質の摂取が基本となります。また、ビタミンCやEといった抗酸化ビタミンは、炎症や筋肉の酸化ストレスを抑える役割があります。さらに、ポリフェノールも抗炎症作用が期待できる成分として注目されており、果物やお茶などから取り入れるのがおすすめです。
バランスのよい食事を心がけることで、筋肉の回復を内側からサポートできます。
「ビタミン」が多く含まれる食材
【ビタミンC】赤パプリカ、ブロッコリー、キウイ、いちご、柑橘類
【ビタミンE】アーモンド、ひまわり油、かぼちゃ、アボカド
【ビタミンB群】豚肉、レバー、納豆、卵、玄米
「ポリフェノール」が多く含まれる食材
・ブルーベリーやぶどう
・高カカオチョコレート
・緑茶(紅茶、ウーロン茶も)
・玉ねぎ
・なす
・赤ワイン
・大豆製品(イソフラボンとして)
「タンパク質」が多く含まれる食材
・鶏むね肉
・卵
・鮭
・ツナ
・牛赤身肉
・豆腐、納豆、枝豆、高野豆腐などの大豆製品
・ヨーグルト、チーズなどの乳製品
・プロテインパウダー(補助的に活用する場合)
【まとめ】筋肉痛とうまく付き合って快適な運動習慣を!
筋肉痛は、体が成長しようとしているサインでもあります。
正しい知識と対処法、そして日々の栄養ケアを意識することで、無理なく回復をサポートできます。
運動を続けるうえでの不安を減らし、前向きに体を動かしていけるよう今回の内容をぜひ日常に役立ててみてくださいね。
筆者プロフィール
大塚聡 / パーソナルトレーナー(株式会社サミープロジェクト)
株式会社 サミープロジェクト代表取締役
サミーコンディショニングスクール代表
一般社団法人日本生活体力推進協会代表理事
1961 年5 月生まれ
早稲田大学教育学部体育学専修卒
早稲田大学大学院人間科学研究科修了(体力科学専攻)
フィットネスクラブ指導責任者、経営責任者を経て独立
株式会社サミープロジェクトを設立し現在に至る
資格
人間科学(健康科学)修士
教育学士
NSCA-CPT(パーソナルトレーナー)
CSCS(ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
日本体力医学会健康科学アドバイザー
厚生労働省ヘルスケアトレーナー
中学・高校保健体育教員ら
国際救命救急協会救急心肺蘇生法取得者
主な企業フィットネス実績
・ベネッセコーポレーション高齢者身体づくり教室監修
・日本商工会議所主催生活習慣病予防改善セミナー全国各地にて講演
・モーリスコーポレーション健康事業顧問
・ライオンズクラブ健康セミナー
・公立高校における親子健康セミナー
など、企業の健康関連部門においても多数活動