「有酸素運動」と「無酸素運動」の違いを知って効率よく健康になろう!
「有酸素運動と無酸素運動の違い=呼吸してるかどうか」だと思っていませんか?実はその認識、ちょっと違うかもしれません。運動の本質をやさしく解説します!
ウォーキングや筋トレ、普段の運動をもっと効率よくしたい方へ。有酸素運動と無酸素運動の本当の違いを、専門的すぎない視点でわかりやすくご紹介します。
「有酸素」「無酸素」の本当の意味
「呼吸をしているかどうか」で分けられがちな有酸素・無酸素運動。でも実際には、もう少し深いところで違いがあるのです。その本質を見てみましょう。
「有酸素運動」「無酸素運動」のイメージ
ウォーキングやジョギングのように、呼吸をしっかりしながら酸素を体内にたくさん取り入れて行う運動を「有酸素運動」
反対に、猛ダッシュや筋トレのように呼吸をせずに踏んばるような運動を「無酸素運動」と思われてはいませんか?
確かにイメージとしては間違ってはいませんが、根本的にはちょっと違うようです。
実際には“外呼吸”か“内呼吸”か、という話
まず「有酸素、無酸素」の問題というのは、「肺レベルでの呼吸をしているかしていないか」ということではありません。「肺レベルの呼吸」というのはみなさんが一般的に「呼吸」と考えられているものです。「肺レベルの呼吸」を「外呼吸」といいます。
「有酸素、無酸素」の問題は、肺レベルの呼吸ではなく筋肉組織(細胞)レベルで行われる呼吸での事象なのです。「筋肉組織(細胞)レベルの呼吸」を「内呼吸」といいます。
筋収縮を起こす鍵は「エネルギー供給システム」にあり!
ここまでは筋肉の細胞内で起こっている呼吸について解説してきました。ここからは運動中の力発揮において要となる「エネルギー供給システム」をなるべく簡単に解説していきます。
筋収縮を起こす「ATP(アデノシン三リン酸)」
筋肉を動かすためのエネルギー源は「ATP(アデノシン三リン酸)」という物質です。
しかしこのATP、体内に貯蔵できる量には限りがあり、全力で運動するとわずか約3秒しかもちません。
そのため、継続的に運動するにはATPを作り続けなければなりません。
このATPをつくる仕組みには2種類あります:
酸素を使ってATPをつくる:「有酸素性エネルギー供給システム」
酸素を使わずにATPをつくる:「無酸素性エネルギー供給システム」
それぞれのシステムを使って行われる運動が、「有酸素運動」と「無酸素運動」と呼ばれているのです。
では、それぞれの運動がどのようなものなのか、もう少し詳しく見ていきましょう。
「有酸素運動」と「無酸素運動」の定義
有酸素性エネルギー供給システムでATPをつくりながら行う運動 → 有酸素運動
無酸素性エネルギー供給システムでATPをつくりながら行う運動 → 無酸素運動
つまり、これらは内呼吸のレベルで起こっている出来事ということなのです。この視点で運動を見直すと、ATPをいかに効率よく生み出すかがカギになることがわかってきます。
では実際に、ATPを増やすにはどのような運動が効果的なのでしょうか?
「ATP(アデノシン三リン酸)」を増やす運動とは?
ATPの生産量を高めるには、筋肉の中にある「ミトコンドリア」の働きを活性化することがポイントです。
そのために効果的なのが、有酸素運動です。ウォーキングや軽いジョギングなどの運動を継続的に行うことで、ミトコンドリアの数や働きが高まり、ATPをより効率よくつくれるようになります。
一方、無酸素運動も短時間で大きなエネルギーを必要とする場面では重要で、両方をバランスよく取り入れることで、より質の高い体づくりが期待できます。
「ATP(アデノシン三リン酸)」を増やす運動のコツ
ATPを効率よく生み出すには、有酸素運動が鍵になります。では、日々の生活の中でどのように取り入れると効果的なのでしょうか?ここでは、実践に役立つポイントを簡単にご紹介します。
運動のタイプで変わるエネルギー供給の仕組み
これは一概に判断が難しいのですが、あえてシンプルに言うなら:
・長時間続けられる運動 → 有酸素運動
・瞬発的に力を発揮する運動 → 無酸素運動 と捉えることができます。
また、実際の運動では両方のシステムが関わっていることが多いです。
とはいえ、体内が完全に無酸素状態になることはありませんし、内呼吸のレベルでも常に酸素は使われています。
このように考えると、実はかなり複雑な話なんですね。
「すべての運動は有酸素運動」?
近年では、「有酸素運動」「無酸素運動」という分類自体が古いという見方もあります。
中には「すべての運動は有酸素運動である」という考え方もあり、私にとってもとても興味深く感じています。
『エネルギー代謝を活かしたスポーツトレーニング』(八田秀雄/講談社)
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784061531253
最も大切なのは有酸素・無酸素の両方を行うこと!
有酸素運動は持久力アップや脂肪燃焼に、無酸素運動は筋力や代謝アップに効果があります。どちらか一方に偏らず、両方を組み合わせることが理想的です。
たとえば「ウォーキング+軽い筋トレ」のようなシンプルな習慣でも十分。自分の体力に合った運動を、無理なく続けていくことが健康への近道です。
【まとめ】運動の“質”を高めて、無理なく健康を手に入れよう
今回は、「有酸素運動」と「無酸素運動」について、根本的な視点からわかりやすくご紹介しました。
運動生理学の分野は、今もなお研究が進められており、今後も新たな発見が期待されています。これからの展開が楽しみですね。
H3:筆者プロフィール
大塚聡 / パーソナルトレーナー(株式会社サミープロジェクト)
株式会社 サミープロジェクト代表取締役
サミーコンディショニングスクール代表
一般社団法人日本生活体力推進協会代表理事
1961 年5 月生まれ
早稲田大学教育学部体育学専修卒
早稲田大学大学院人間科学研究科修了(体力科学専攻)
フィットネスクラブ指導責任者、経営責任者を経て独立
株式会社サミープロジェクトを設立し現在に至る
資格
人間科学(健康科学)修士
教育学士
NSCA-CPT(パーソナルトレーナー)
CSCS(ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
日本体力医学会健康科学アドバイザー
厚生労働省ヘルスケアトレーナー
中学・高校保健体育教員ら
国際救命救急協会救急心肺蘇生法取得者
主な企業フィットネス実績
・ベネッセコーポレーション高齢者身体づくり教室監修
・日本商工会議所主催生活習慣病予防改善セミナー全国各地にて講演
・モーリスコーポレーション健康事業顧問
・ライオンズクラブ健康セミナー
・公立高校における親子健康セミナー
など、企業の健康関連部門においても多数活動