糖尿病の予防・改善に効果的!「運動療法」について徹底解説(前編)

二人の女性が励まし合いながらジムで運動している

糖尿病は、今や日本で有病者と予備軍(糖尿病が疑われる人)を合わせて2,000万人はいると言われています。「糖尿病」と聞くと薬物療法や徹底した食事指導をイメージする方も多いでしょう。しかし、それと同じくらい大切なのは「運動療法」です。

今回は糖尿病の基礎知識から、糖尿病における運動療法の有効性についてお話ししていきます。

「糖尿病」の基礎知識について

糖尿病について

糖尿病の運動療法についてお話する前に、まずは糖尿病になってしまう原因やメカニズム、糖尿病の種類について解説します。

「糖尿病」とは?

糖尿病とは血液中のブドウ糖の値(=血糖値)が高くなっている状態です。生活が豊かになりインターネットが普及したために外に出る機会が減ったことや、日本では超高齢化社会に伴い、糖尿病に罹患する人の割合が増え続けています。そこでまずは、糖尿病の基礎知識について詳しく説明していきます。

血糖値が高いとどうなるの?

血糖値が慢性的に高い状態が続くと、血液がドロドロの状態になります。ドロドロの血液は血管を傷つけていき血管がしだいにぼろぼろになっていきます。血管が脆くなることで血液が適切に内臓などへ供給されなくなり、腎臓や神経、眼の病気などを発症してしまいす。

「糖尿病」になる原因は?

血糖値を下げるインスリン(すい臓で作られるホルモン)の作用が低下し、血糖値を正常な値にコントロールできなくなるためです。主に、日本人はこのインスリンの分泌や働きが弱い人が多いと言われています。そのため、食べ過ぎや飲み過ぎ、睡眠不足、運動不足などの不摂生が続くことで糖尿病になってしまいやすいのです。

「糖尿病」の診断基準

糖尿病の診断基準は以下二つの側面から診断されます。

血糖値での診断

・正常な血糖値   [ 空腹時 110mg/dl未満、 食後2時間 140mg/dl未満 ]
・糖尿病の血糖値 [ 空腹時 126mg/dl以上、 食後2時間 200mg/dl以上 ]
※ 空腹時 110mg/dl~126mg/dl未満、食後2時間 140mg/dl~200mg/dl未満を 「境界型糖尿病」と言われ、糖尿病の“予備軍”とされます。

ヘモグロビンA1C (HbA1C)での診断

赤血球中にあるヘモグロビンのうち、ブドウ糖と結合している特殊なヘモグロビンの割合をパーセント(%)で表した指標です。「正常値は 4.3〜5.8%」です。

この指標は過去1~2カ月間の血糖コントロールと関係があり、HbA1C が高ければ、その時点の血糖値は正常だとしても、1〜2カ月間は血糖が高い状態が続いていたことになります。

血糖値の診断と共に「HbA1Cが6.5%以上」の場合は糖尿病と診断されます。

「糖尿病」の種類

実は、「糖尿病」には大きく分けると3種類あります。

Ⅰ型糖尿病(インスリン依存型)

ウイルス性の疾患などに罹患した際に、何らかの異常抗体によって自分の膵臓を攻撃してしまいインスリンが分泌できなくなってしまう糖尿病です。原因の詳細は未だ解明されておらず、幼児期から青年期の発症が多いと言われています。糖尿病患者のうちⅠ型糖尿病の患者は全体の約5%です。飲み薬では血糖値をコントロールできない為、インスリンの投与を行います。

Ⅱ型糖尿病(インスリン非依存型)

糖尿病に罹患する人の95%はこちらのⅡ型糖尿病と言われています。偏った食事や運動不足、睡眠不足、肥満、ストレスなどによって発症しますが、場合によっては遺伝が原因になることもあります。ですのでⅡ型糖尿病は「生活習慣病」と呼ばれ、まずは食事管理や運動療法が取り入れられます。その後も改善が見られない場合に薬物療法やインスリンの投与を行います。

妊娠糖尿病

妊娠期間中に起こる糖尿病は「妊娠糖尿病」と言われます。妊娠するとホルモンバランスに変化がおき、その結果血糖値が上昇することがあります。ほとんどは出産が終わると落ち着くことが多いとされていますが、再発する可能性もあるので注意が必要です。妊娠中の薬物療法は出来ないため、インスリンの投与で対処します。

糖尿病には“運動療法”が有効である

1キロのダンベルを持ち運動に励む女性

ここまで糖尿病についての基礎知識を解説してきました。ここからは糖尿病に「運動療法」が有効である理由や、糖尿病の種類によっての運動療法をお話していきます。

糖尿病の95%は運動療法が有効!

糖尿病のほとんどの治療で運動療法が取り入れられています。それは運動により血液中のブドウ糖が筋肉のエネルギー源として使われることで、血糖値が下がります。また、体を動かすことにより血糖値を下げるインスリンの分泌が盛んになります。糖尿病は身体機能そのものを低下させてしまうので、運動により合併症の予防にもなります。

Ⅰ型糖尿病の方の運動療法について

Ⅰ型糖尿病の運動療法の有効性はまだ、確立されていない状況です。ただし体力づくり、ストレス解消などに運動は効果的です。インスリンの量や食事指導と合わせて、医師としっかり相談し調整していけば運動やスポーツの実施は可能です。

糖尿病で運動を避けた方が良い場合

以下の場合には、悪化や不調をきたす恐れがあるため運動療法を取り入れることを中止する必要があります。必ず医師に確認しましょう。
・血糖値のコントロールが思わしくないとき
・「糖尿病網膜症」による眼底出血がある
・腎不全がある
・心肺機能に障害がある、または可能性がある
・骨や関節に疾患がある
・急性の感染症に罹患した場合
・自律神経に障害がある、または可能性がある

血糖値高めの人はとにかく「歩く」ことが大事

健康に気を使い楽しく過ごす若い女性

実際に「糖尿病」と診断が降りていない人でも、血糖値が高く“糖尿病予備軍”であるという人はまず「歩く」ことから始めてみませんか? 誰でも簡単に血糖値を下げることができるのが「歩く」こと。ここからは「歩く」ことを日常に取り入れるためのコツをお伝えします。

「歩く」ことを取り入れる際の注意点

まずは、血糖値の上昇を緩やかにして糖尿病の予防・改善につなげるための「歩く」際の注意点をお伝えします。

①毎日、継続して歩く

とにかくたくさん歩きましょう。車移動ばかりの人は電車を積極的に使うことも有効です。糖尿病は生活習慣病であるということを忘れてはいけません。一日15分からでいいので、継続して歩くことを始めてみましょう。

②シューズを見直す

歩くという運動は、程度は様々ですが膝関節や股関節等下半身に負担をかけます。特に運動不足の人は体重が重かったり、脚筋力も弱っていたりします。せっかく歩くようになったのに関節痛になってしまったら継続のモチベーションも下がってしまいます。ですのでクッション性のよい「歩くためのシューズ」で歩きましょう。

③どうしてもの場合でも3日以上間隔を開けない

運動によってインスリンの働きがよくなる効果があるとされていますが、その効果は「3日」で消えてしまうと言われています。せっかく歩いたのであれば効果を維持したいですよね。週末にまとめて歩くよりも、こまめに毎日歩くことを心がけましょう。

「歩く」を日常生活の中で習慣化するコツ

気軽に始められる「歩く」ことを習慣化するために工夫できることはたくさんあります。・車を使わない
・電車やバスの一駅分を歩く
・エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を使う
・日用品の買い物は通販ではなく店舗に行く

【まとめ】糖尿病の予防・改善には「運動」を日々の習慣に!

朝に森林浴をしながらウォーキングする女性

ここまで糖尿病の基礎知識から、運動療法の有効性についてお話してきました。いかがでしたでしょうか。運動療法を無理のない範囲で毎日の習慣に取り入れることが糖尿病の改善には大切です。

糖尿病の運動療法については<後編>もご覧ください

ここまでは、運動療法の有効性を解説しましたが、下記の記事では実際に「どんな運動をしていけば良いの?」というお悩みについて丁寧に解説しています。この記事と合わせて読んでいただき、糖尿病の改善にお役立てください。

筆者プロフィール

大塚聡 / パーソナルトレーナー(株式会社サミープロジェクト)

株式会社 サミープロジェクト代表取締役
サミーコンディショニングスクール代表
一般社団法人日本生活体力推進協会代表理事
1961 年5 月生まれ 早稲田大学教育学部体育学専修卒
早稲田大学大学院人間科学研究科修了(体力科学専攻)
フィットネスクラブ指導責任者、経営責任者を経て独立
株式会社サミープロジェクトを設立し現在に至る

資格

人間科学(健康科学)修士
教育学士
NSCA-CPT(パーソナルトレーナー)
CSCS(ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
日本体力医学会健康科学アドバイザー
厚生労働省ヘルスケアトレーナー
中学・高校保健体育教員ら
国際救命救急協会救急心肺蘇生法取得者

主な企業フィットネス実績

・ベネッセコーポレーション高齢者身体づくり教室監修
・日本商工会議所主催生活習慣病予防改善セミナー全国各地にて講演
・モーリスコーポレーション健康事業顧問
・ライオンズクラブ健康セミナー
・公立高校における親子健康セミナーなど、企業の健康関連部門においても多数活動